なぜアトピー性皮膚炎が悪化するのか



アトピー性皮膚炎は、ダニやハウスダスト、その他の原因物質が皮膚から進入し、免疫機能がその原因物質を排除しようとするために起こる湿疹反応です。

アトピー素因を持ち、皮膚のバリア機能が低下して、原因物質が皮膚に作用し、アトピー性皮膚炎を発症したとしても、その後原因物質が取り除かれれば、通常2〜3週間で湿疹反応は治まります。

しかし、原因物質が毎日皮膚に進入する環境におかれると、炎症反応のスイッチが絶えず入り続け、炎症反応が治まることができなくなってしまいます。

毎日皮膚がさらされる原因物質としては、合成界面活性剤を使用したシャンプー、石鹸、ボディソープ、その他化粧品。それから、ハウスダストや、カーペット、布団に付着したダニの死骸や糞、さらに花粉などもあげられます。

これら原因物質の皮膚への進入により、炎症や痒みが襲ってくるため、24時間寝ている間も爪で掻き続けることで、角質層がぼろぼろになり、セラミドや水分が失われ、皮膚のバリア機能がさらに低下していきます。

すると、以前にも増して原因物質が角質層を超えて進入することにより、さらに炎症反応はひどくなり、痒みも強くなっていきます。
ステロイドは、これらの炎症や痒みを劇的に抑制する唯一の薬であるため、医者に行くとステロイドを処方され、それを塗ることで症状は劇的に改善されます。

しかし、原因物質が取り除かれていないため、ステロイド使用を中止すると、すぐに炎症が復活します。

すると、またひどい痒みが襲ってくるため、患部を掻き壊すこととなり、バリア機能もさらに失われ、多くの原因物質の皮膚からの進入を許すこととなります。

そうすると、ステロイドを常に塗り続けないといられなくなり、「ステロイド依存」という状態になります。

この時点で、ステロイド外用薬を塗ることを急にやめてしまうと、俗に「リバウンド現象」と呼ばれる、浸出液をともなうひどい炎症反応が起こることになります。

これには2つの理由があります。1つ目はステロイド外用薬の長期使用により、副腎皮質機能が抑制されることがあげられます。
ステロイド(副腎皮質ホルモン)はもともと副腎で生成されるものですが、短期使用ではほとんど影響がないものの、長期でステロイド外用薬を使用することにより、副腎で生成されるステロイドの量が減少するため、ステロイド外用薬を使用する前より炎症がひどくなってしまうのです。

2つ目の理由は、ステロイドには免疫力を抑制させる機能があることによります。
アトピー性皮膚炎は免疫機能の過剰反応が原因のひとつです。ステロイド外用薬を使用することで、患部の免疫力を抑制させ、IgE抗体が産生されるを抑えることで、炎症を止めることができます。
しかし、ステロイド外用薬の使用により免疫力が低下している状態で、突然その使用を中止すると、浸出液を伴う患部に細菌が繁殖して、ジュクジュクした状態になってしまうのです。

こんな状態になってしまったにもかかわらず、そのまま炎症も抑えることもせずに放っておくと、黄色ブドウ球菌やヘルペスウィルス、白癬菌や溶連菌などの感染により、合併症を起こし、最悪の場合、死に至ることもあるのです。
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